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歴史家・塩野七生さんが現在を語る。「民主政の裏には衆愚政」②

 ―都市国家アテネを中心にギリシャ人は団結し、攻めてきた強大なペルシヤ帝国に第1次、第2次戦役で勝った。当初はアテネの民主政は機能していた。

「民主政は最良の制度だと思っている。民主政下で初めて自由が花開くからだ。自由とは基本的には思考の自由だ。表現の自由とか報道の自由とかいろいろあるけど、基本は思考の自由です。民主政下の方が今までにない新しい考え、戦略、戦術というのが生まれる可能性がずっと多い」

 「民主政も含めて、すべてのシステムというのは人間がつくったものです。つまり神々よりも人間が考える。そして神々はそれを助ける役割。アテネのテミストクレスとペリクレスは完璧に民主政で選ばれた。しかし民主政というのは思考の自由があるところで柔軟に機能させなければ結局、機能できない。彼らは民主政の枠の中で柔軟に動き、民主政が機能した。日本では民主主義と言っただけで機能すると思っている人が多いが」

 「テミストクレスやペリクレスたちは民主政下の政治家だ。誰よりも一歩を前に踏み出した。今の政治家も経済人も一歩前に踏み出し、リスクを負う覚悟がない。」


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世紀に入ったときに日本人の多くは「世界の政治競争で勝ったのは民主主義と資本主義だ」と感じたと思う。しかし欧米では近年ポピュリズムや排外的な動きが目立ち始めている。

 「民主政を活用するには国会へ行って旗を立てて騒いだってうまくいくというものではありません。民主政っていうのは投票にすべてがかかりますからね。投票した人間の思いは、やはり『機能してくれ』って期待しているわけですね。だから機能しないと失望して、失望した揚げ句はどうなるかというのがポピュリズム。

 日本では衆愚政って言いますが、ポピュリズムってのは
19世紀末に英国人が言い始めた言葉であって、それまではデマゴジアと言っていた。民主政とデマゴジアというのは金貨の裏表みたいで『うまく使うとこちら側になるが、そうでないと裏が出る』というようなものです。ポピュリズムは民主政の国以外では生まれないのです」


by mikanyuzukaki | 2017-12-31 23:56 | ニュースを読んで | Comments(0)
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